現行ラインナップになくても、あの頃の憧れや、もう一度乗ってみたいという思いをかなえてくれるのが絶版車。数ある絶版車の中から、'01 KAWASAKI SuperSHERPAを紹介します。
誰もがオフロードライディングを楽しめるようにと披露されたKLX230の報道向け発表会。記者からは「“シェルパ”というネーミングを使ってもよかったのでは!?」という声もあった。それは、新型KLX230が、250時代初期のような“闘う4スト”路線ではなく、スーパーシェルパのようなコンパクトな車体だったからだ。
セローに対抗するカワサキ・トレック系といえば、これしかない! というほどに我々オフロードバイクファンの心に残っているのが、このスーパーシェルパ。1997年に登場し、隠れた名車として名高いモデルだ。
レーサーレプリカブームに呼応するかのように、80~90年代には過激なフルサイズ・オフローダーが数多く登場した。街乗りや林道ツーリングのみならず、エンデューロレースも想定し、前後サスペンションのストローク量は長くなり、エンジンもピーキーになるばかり。必然的にシート高が高くなり、ビギナーや女性、小柄な人には敬遠されがちとなったのは想像にたやすいだろう。
そんななか根強く支持されてきたのが、おなじみのヤマハ・セロー。扱いやすいオールラウンダーは、コンペ志向になるデュアルパーパスたちの中で揺るがない人気を誇った。
そのセローに真っ向勝負を挑んだのが、スーパーシェルパだった。デビューした97年は、ホンダからもSL230(MD33)が発売され、フレンドリーでダートをノンビリ走りたいという市場からの要望が強かったことが分かる。
一気に激戦区となったトレッキング系モデル。走破性を確保しつつ、シート高をいかに低くできるかがこのセグメントではまず重要だが、モデルチェンジしたばかりのセロー(4JG)、SL、スーパーシェルパのシート高は810㎜と横並び。さらに、左右51度という広いハンドル切れ角も3車まったく同じで一歩も譲らずであったが、スーパーシェルパだけが排気量249㏄のDOHC4バルブエンジンを搭載。KLX250SR/ESの水冷単気筒をベースに空冷化したもので、空冷SOHC2バルブ223㏄だったセローとSLに大きなアドバンテージとなっていた。
そのパワフルさはスペックを見ても明らかで、セローやSLが20㎰しかないところ、スーパーシェルパは26㎰/8000rpmを発揮。もちろんスペック至上主義ではないところがこのカテゴリーの大きな魅力だが、足着き性にすぐれ、ハンドルが大きく切れる扱いやすく軽快な車体に、力強いエンジンの組み合わせがファンを唸らせ、カワサキらしさもしっかりと垣間見られた。
その後、セローも2005年に225→250㏄化することを考えると、スーパーシェルパがライバルらより先に250㏄で登場していた意味は大きい。
ここで紹介するのは2001年型。傷みやすい外装もシャキッとし、状態のよさに舌を巻く。オールラウンダーとしての実力は現代でも高く、最新のセロー250と走ってもDOHC4バルブならではの力強い走りでひけをとることはないだろう。