KLX230とは……オーナーが語るその真相

そろそろまとめたほうがよいタイミングなのではないだろうか。そうKLX230の評価だ。デビュー時の衝撃や期待など本当に感じたものは大きかった。が、どうやら……もういいだろう。以降はあくまで個人的感想、かつ私だいじろー氏自身がオーナーとして語る感傷と評価として受け止めて欲しい。

衝撃のデビュー

振り返ること2019年夏。ながらくWR250Rという優秀なオフ車が勇退して以降、セロー&トリッカー、CRF250Lという形で国産正統トレールモデルは、機種がかなり絞られてオフロードバイクのカテゴリーの肩身が、WR250R発売前の閑散とした時代並みに狭くなっていた。そんな中、突如としてカワサキから誰もが予測をしなかったKLX230の発売が2019年夏に発表されたのだ。セローの生産終了が確実視されていた折、20年の長きにわたり、いまとなっては意味不明な「元祖 闘う4スト」として活躍したKLXシリーズの正統後継モデルとして、オフ車関係者は「まだイケるぞ、オフ業界!」と胸が高鳴ったのも事実で、ゴー・ライド編集部としても、カワサキからの広告のページ掲載売上を勝手に予測し歓喜。その日は第3のビールではなくビールを飲んだ。

車両本体価格が45万円 これは売れるぜ!!

しかし発表されたモデルを見たオフライダーの大半はビックらこいたのだ。はっきりいおう。「カッコワリィぃ~」で一蹴されたのだ。オーナーであるオレも「やべぇのきたなー」と思ったのも事実。しかしカワサキが完全撤退した公道トレールの出現に、オレは「イケる・流行る」と思ったものだ。そりゃそうよ! セロー250、トリッカー、CRF250L、そして追加ラインナップ。つまり機種数としては33%増。そりゃ流行るに違いない……と。で、これは業界事情だが約700店のカワサキ正規代理店が、金額的にも在庫しやすく、ほかラインナップともバッティングしないこの機種を、販売台数クリアのために積極的に仕入れを行なうことで、この機種の露出がかなりあがるとオレは睨んだからだ。

マスクにもいろいろある時代になりました。
で、こっちが同時に発表された競技モデルKLX230R。こちらは手軽にレーサーが楽しめ、価格的にもスタイル(とくにフロントマスク問題とは無関係のため)的もよく評価もアゲアゲに。

発売開始……すぐに課題が。カワサキのバイクショップのかたにいろいろ聞いて回ったところ、ふたつの課題が顕在化した。ひとつは「どうやってフロントマスクをカスタムするか」、もうひとつは「日本人の体形に合わない沈まない高い車高をどう下げるか」だった。そして結論も早かった。前者については「メーターなどの兼ね合いで簡単にマスクを変えることができない。または、まとまった資金を投じて変更するほどの車両ではない」、後者については「さまざまなパーツ類が干渉して、シートのアンコ抜きくらいしか対応ができない」と。愛知のオフロードの名門「ダートフリーク」社が製作したKLX230のコンプリートカスタム車がすべてを語っていた……原型がわからないほどの金額を投じる、だった。

車体以上の金額を投じてモトクロスまでも楽しめるストリート&MXコンプリートモデル。ライコランド柏に展示していまーす!
あなたはだーれ?

セロー250ファイナルエディションに気付かされた事実

上記のカスタムモデル……ヒューマンで例えるなら全身整形手術である。でもオレはすぐにKLX250ファイナルからKLX230に乗り換えた。フロントマスクのデザインには正直慣れたし、身長も高いので乗っていても問題はなかった。何よりも乗り味そのものは以前のモデルより上をいっていたのも確かで、満足度はいまもガッチリある。

あれから1年半以上が経過する。実態として残念ながら、公道や林道でKLX230が走っているところを一度も目撃したことはない。そしてオレが停車中に地図アプリとか見ていると「はじめて見たよ、このモデル。よく買ったね……」と失礼な声がけを過去3回受けた。……薄々思いはじめたこと⇒このマシンは不人気車で売れていないと。そんな中、セローのファイナルモデルが発表され、飛ぶように売れた。発売後すぐに街でも何度も見かける緊急事態。オフロードマシンが売れないのではなく、KLX230が売れないという衝撃の事実を世の中が証明してくれたのだ。

埼玉県三郷市のヤマハ販売店「Tスペース」の練習会を覗くと、ファイナルモデルが何台も……。

完全スルーされた悲しみの扱いっぷり

そしてカワサキが過去実施歴のないビックらこいたキャンペーンが20年11月に発動された。その名も「KLX230プレゼントキャンペーン」。カワサキ販売店の意向や取引を飛び越えて「バイクをさしあげまーす!!」という驚愕の取り組み。で、キャンペーン終了後もまったく話題にもあがらない無風状態も恐ろしかった。

そんな状況の中、21年モデルが発表される20年秋を迎え、ゴー・ライド編集部にもさまざまなモデルのリリースが。フルチェンジ、マイナーチェンジ、カラーチェンジなどある中、カラーチェンジすら発表もないほぼ唯一の現行車があった。そう。KLX230だ。完全にスルーされたのだ。

やってきた期待の新人 かつ絶対的エース登場!

2020年晩秋。オフ界の野茂英雄、松坂大輔ばりのすげぇ新人の入団発表が。CRF250L/ラリーさまたちの発売だ。当初は20年12月の発売予定だっだが、コロナ禍のデリバリー遅延の影響で、CRF250L/ラリーが約4ヵ月ほど納期延期となり、この春からいよいよ本格的に納車開始に……ガンガン売れるこの事実。さらに車高のタイプが2種から選べるという「一つ上をいく、わかっている政策」で、さらにKLX230は逆風に。もはや質実剛健、リーズナブルで気軽にオフが楽しめる45万円という看板も吹っ飛んでしまったのだ。

誰がどう見ても万人受けするスタイル。価格も仕様もみーんな嬉しい「わかっている」やつです。

これがKLX230のデビューからいまに至る経緯だ。オレは決してディスってはいない。KLX230を愛するオーナーのひとりであることは間違いないし、何がいいたいかというと、こういうモデルって稀に登場したものだ。スズキジェンマとか、ホンダVT1300CX、NM-4とか、見たことないCTXとかね。なので、デビューからここまでのKLX230は、個性的なスタイルと車高の高さで、マ二アック的な車両として世間の評価が落ち着いてしまったということだろう。読者の愛車のコーナーなどではKLX230を見るけど、実際の生オーナーに一日も早く、やらせじゃなく遭遇してみたいなーと思っているオレ。スタイルの指摘はもうしゃーない、でも足着きに問題がないライダーには、ぜひ一度このKLX230に乗ってほしいのだ。いいバイクなんだよ! マジで。これで結局カワサキが公道トレールから撤退とかになったら、どうすんのよ、みんな。そんな目で見ないでくれよ!!
※超個人的な感想と主張です。

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