GARRRR創刊35周年特別掲載 『ガルルの証言者たち』『ウイリー松浦』編

1986年のバイク全盛期に創刊したオフロード雑誌の草分け『GARRRR-ガルル-』。出版・発売元がこれまで多数変遷してきた中、じつは今年で35周年を迎えている。ガルルを引き継いだゴー・ライドでは、そんなガルルのレジェンドたちの現在を特別掲載する。オフロード業界の今を存分に語ってもらおう。

GARRRR創刊号。バオバブストリート社が編集し、実業之日本社より創刊。当時はエンデューロレースや海外のレース情報などを中心に旬の情報を網羅。その後、毎月発行。ウイリー松浦さんは当時からエンデューロコースでのテクニックコーナーを担当してもらっていた。
現在のウイリー松浦さん。連載当時の笑顔はそのままに、現在は茨城県のコースとバイクショップを運営している。

―手作り料理とレンチンと―故障が生むドラマ

その人懐っこい笑顔は68歳になった今でも、まるで変っていない。スタントライダーやホンダのテストライダーなど、オフロード界の草分け的な存在で、ガルルで人気となった名物コーナー『ウイリー松浦のこれがエンデューロだ!!』などを監修いただいたウイリー松浦さん。そんな彼にガルルをはじめゴー・ライドはもちろん、昨今のオフロード事情を語っていただいた。バイクショップ「ウイリー松浦」と茨城県で運営しているオフロードコース「エンジョイスポーツランド」に編集部がお邪魔した。

「コースに遊びにくる若いライダーが最近増えているよ。うれしいことだね。とくに女性も含めて若い初心者が多いよね。でもね、そのライダーのオフのレベルを把握するのが最近は難しくなってきたな。以前はライダーの実力が分かっている先輩や仲間と一緒に連れられて、『おまえならこのコースくらいがちょうどいい』ってことでのコース走行が多かったけど、いまは動画を見てやってみたくなった、という一人でコースに遊びにくる若者が多くてね。何からアドバイスしていいか少し戸惑うシーンがあるよ。最近は慣れたけど、人からの紹介でなく、なんでもスマホからなんだね」と。

人から人へのつながりから動画からリアルというユーザーが増え、見ていて危ないシーンも多いという。またバイクの知識もすべてSNSや動画からという初心者が多いため、実力にあわないバイクを所有しているライダーも多い。そういったライダーはすぐに下りてしまったりケガをして、オフロードを離れてしまうので、それが残念でならないという。逆にハマる人のドはまり度も特長的で印象に残っているという。

「最近のバイクは壊れないからね……。それはいいことだけど、ドラマがなくなったかな。以前の競技の世界では、いかに壊れないかを逆算してチームを運営していたな。バイクのコンディションが結果を変えてドラマを生む……。チームの力とライダーの力がそれぞれ問われたな。でも最近のモデルは壊れないからね。チーム力というより、ライダーの実力がすべてというのが現実だよね。そこが一番変わったのかな。まあ、そのガチでライダーの実力というのもいいけど」という。

別に昨今のオフ事情を嘆いているわけではない。それらを時代の流れとして受け入れているのが令和のウイリー松浦なのだ。ガルルについて聞いてみた。

「ガルルはとにかくライダー目線に立った、敷居を低くした分かりやすい雑誌だよね。それでいてしつこさがないというか『オフロード総合誌』を貫いた内容だよね。いまのゴー・ライドもしっかり、その点を引き継いでいるよね。分かりやすいよ」

「昔は九州だったかな……KTMの競技車と実際の馬と並走してどちらが初速がいいか、などバカみたいなことをやったな……。初代の編集長をはじめ、それぞれ編集長の個性や読者との距離感・スタンスもあって面白かったね。今? 今は年齢もあってたまにしか乗らないよ。最近はコースの運営を中心にしていてね。レンタルバイクも好評で若い人も増えて、そんな新しいライダーと接すると楽しいよね」

ホンダの小排気量のレーサーを中心に、装備はもちろんバイクも用意している。ここのレンタルバイクを楽しんで体感し車両購入をする若者も多いという。

「昔のバイクはある意味、メーカーのみんなの『手作り』というか『手料理みたいな味』があったな。それに比べると今のバイクは完成度は高いけど、無機質というか、『レンジでチン』みたいな感じで一台ごとの個性がちょっと乏しいかもね。あの時はメーカーが競うように新しいバイクを発売してて、そしてどれも個性があって売れたよね。今はそんな時代とは違うから仕方ないけど、ちょっとさみしいな」

ガルル創刊から35年。つねにオフロード界を見てきた松浦さん。時代の違いを受け入れつつも、いまはコースの運営を通じ後進の育成を行なっている。

「公道モデルのオフロードマシンが、もうほぼないよね。今ではCRFくらい? 選択肢がなくなって残念だよね。オフロードはバイクの原点。自然と遊んで楽しく乗る、シンプルな構造でバイクの醍醐味が味わえるからね。でも最近ではコースでの走行や、競技などにオフは人が集まってきているよね。クローズドだけど、オフの楽しみかたも変わってきたのかも。オフ人口が減った感じはまったくないね」

昨今の業界事情への心配と期待を同時に感じているレジェンドはまだまだ手応えを感じているようだ。

「編集長によろしくね。たまにはウチのコースも使ってね」と愛くるしい笑顔で語ってくれたレジェンドだった。

こちらが大人気コーナーの『ウイリー松浦のこれがエンデューロテクニックだ!! 』の当時の連載のページ。大人気となり、同タイトルをまとめた書籍も多数発売となった。今でも持っている読者も多いはず。
昭和61年(1986)創刊号の背表紙より。XLR250R、XL200R、XL125Rの広告を掲載。当時メキシコの「BAJA(バハ)1000」に参加し大健闘した森岡進ライダーをシンボルに。また創刊号は「週刊漫画サンデー増刊」というのも当時らしい。

ウイリー松浦が選ぶ4メーカーベストトレールマシンはこれだ!!

CRM250AR すべてにおいて万能機。ロードもオフも競技でもなんでも最適な性能を発揮するまさに名機といえる一台という。
セロー225 バイクに必要なものをそぎ落として225㏄という新たな設定と意味を教えてくれる、ある意味で革命児的な一台だ。
RMX250S 圧倒的なハンドリングのよさを実現したスズキのトレール。操作性という面ではピカイチという特徴的な一台だ。
KDX220SR 荒々しいパワーを備え、操作ごとに地面を捉えて、路面にパワーが伝わっていくトルク感が魅力的な一台だ。

エンジョイスポーツランドかすみがうら(茨城かすみがうら市西成井319-3)

ウイリー松浦さんが運営する中級者向けコース。首都圏からも近く、レンタルバイクなども揃えており休日はオフロードでいっぱいになるという。このほかに初心者向けのコース「谷田部エンジョイスポーツランド」も運営している。

プロテクター類なども揃っており、レンタルバイクを用意されている。

ショップウイリー松浦
東京都足立区辰沼 2-17-25
TEL:03-3628-2633

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