1986年のバイク全盛期に創刊したオフロード雑誌の草分け『GARRRR-ガルル-』。出版・発売元がこれまで多数変遷してきた中、じつは今年で35周年を迎えている。ガルルを引き継いだゴー・ライドでは、そんなガルルのレジェンドたちの現在地を特別掲載。オフロード業界の重鎮たちにオフへの想いを語ってもらった。

―ヤマハはあの時代 新しいことに挑戦していた―

全日本レディースモトクロスで活躍する高校2年生#7(2021)穂刈愛香選手が所属する「TOMOレーシング」。前回好評だった「ガルルの証言者たち」、その2回目は「TOMOレーシング」の代表で「トモさん」の愛称で親しまれるオフロード界の重鎮、吉原朋正さん(※以下トモさん)だ。

トモさんは16才からモトクロスで活躍し18才でヤマハに入社すると開発・ライダー・実験部など当時のヤマハの数々のバイクに携わり、とくにオフロードジャンルでは挑戦的なモデルが次々と発売された80年代後半のモデルの車両カタログや、販促用のショップのポスターなどのモデルライダーとしても活躍。同社の開発・テスト・モデルとヤマハのオフロードマシンの中心につねに立っていた偉人だ。その後バイク販売店を運営しつつレース活動やスクールでの講師など幅広く活動。現在は67才となり、千葉で「TOMOレーシングサービス」を運営。ショップ運営のほか大会などにも参加してバイクを楽しんでいる。

「ガルルの仕事は創刊からだからいろいろ印象深いよね。ウチの自宅に編集部とカメラマンが集合してみんなでBBQして、その後敷地内の山々で撮影というのが結構ルーティンだったよね。だから楽しかったな」ガルルの創刊時から90年代は「エンデューロ=ウイリー松浦さん」「林道ツーリング&テクニック(ナンバー付き)=トモさん」という形で、テクニックやポイントの紹介を連載して人気を博した。またテクニックはもちろん、そのルックスと人柄、何より分かりやすさもあり長期連載はもちろん、それらの人気コーナーの書籍化やビデオなど、ガルルそのものの顔となった。そんなこともありショップにはオフロードに関する貴重なカタログやポスター、オフロード雑誌は図書館並み(ガルルは全冊あり)に揃っており、それぞれの思い出話などもあって、聞いているとあっという間に時間が経過する。

国際A級ライダーとしてヤマハから参加した全日本選手権の谷田部でのエントリーの模様。いまでは当たり前になっているタンクまで伸びたシートは、トモさん自身が作った伝説のシート。股間を強打し入院した経験からオリジナルを開発。ここからシート革命が起こった。
創刊から人気だったトモさんのテクニックコーナー。人気連載となった「トモさんの林道走破スーパーテクニック」は、走行条件にあわせたテクニックを図解して説明。読者を対象に一緒に走るコーナーも人気に。書籍化やビデオなどにもなり、いまでも人気な指南書となっている。

「当時のF編集長と40人近いグルーブで林道ツーリングした時だったかな。取材する編集長がいきなり転倒して骨折。どうみても大ケガなのにそのまま撮影継続……帰りに一部の参加者が田んぼを壊して警察沙汰になったり……いまだからこうして話せるけど、その時はどうなることかと……。ウチが近くで店舗運営しているのを知られているからさ……」となかなかハードな思い出を語ってくれた。もう時効だろう。ほかにもいろいろ語ってくれた。

「ヤマハの話になっちゃうけど、ついに市販トレールのオフ車がなくなったね。寂しい限りだよ。初心者がオフに興味があったとしても『じゃあレーサー買って、トランポも買って』じゃ……敷居が高いよね。僕らの時は50㏄や90㏄から入って、これらをエントリーモデルとして気軽にはじめることができたからね。ライダーなら誰しも一度はオフをやったと思うよ」

「最近はバイクショップが主催となってのイベントや林道ツーリングが少なくなったからなのか、ネットで知り合ってグループになったりするライダーが増えているね。ショップのイベントが少なく、林道ソロは……ということでSNSが登場って感じみたい。それにネット通販もスゴイね。以前は〇〇ブランドは正規代理店から、というこれまでの販売ルートやルール、そのプロがいたから安心だったけどいまは違うね。知ったら最短でダイレクト購入するから正しい説明がされてなかったり、取り付けを失敗したりで……まあそういう時代なんだよね、きっと」

80年代のヤマハ車開発の中心人物だったこともあり、やはりヤマハの話が出てくる。当事者としての貴重な声だ。

「あの頃のヤマハは、つねに新しいことに挑戦していた時代だったね。市販車トレールモデルはとくに関わったけど挑戦的だった。ベースにある考えは『YZ』なんだよ。まずは『YZ』を勝てる最強のモデルにすることが前提で、市販車はその最高の技術をどう公道モデルに生かすか、という攻めの姿勢だったな。DT200WRなどもサスや足まわりにそれらを採用したし、とにかく足まわりを中心にレーサー→公道モデルというスタンスがとにかく印象的だった。中古車でいまでも人気があるのも頷けるよね。いまのモデルにはない足腰のしっかりしたバイクが、当時は次々に発売されていたね」

80年代のオフロード熱気溢れるヤマハの各モデルのストーリーの語り部。ガルルの創刊より連載し人気ライダーとしてのオフロードを知り尽くす情報通。ヤマハオフロード博物館ともいえる貴重な資料が展示されているショップ店内。いまも変わらずオフロードを愛してやまないオフロード界の重鎮トモさん。その後も懐かしいオフ&ヤマハ談義を披露してもらった。

店内の倉庫はまるでオフロード資料館。ガルルについては、すべてのバックナンバーが揃っているのはもちろん、後楽園で開催したスーパークロスでのリックジョンソンのパネルや、雑誌や資料などの写真・パネル・ポスターがズラリと並ぶ。見たいかたは事前に連絡を。
TDR250の販売店用パネル。ライダーの1人がトモさんで苫小牧の工業団地建設予定地に有珠山から砂を運び、砂煙のために石灰を混ぜクレーンにカメラマンを載せて撮影。
パネルなど販促物のモデルとして活躍。
カタログのライダーがとして活躍
↑↓ガルルのビデオやハイラックスのイメージカットにも登場。
ガルルの本として「トモさんの林道スーパーテクニック」をまとめた書籍は人気でPART4まで発行された。

トモさんが選ぶ ベストトレールマシンはこれだ!!

セロー225

バイクに必要かつ充分な設定として225㏄を確立した考えかた、コンセプトはやっぱりいまでも斬新な一台でしょう!

TT250R

空冷エンジン、VMキャブ、前後ディスク、セル付きなどで本格装備と仕様。さらに世界初のデジタルメーター付き!

TOMOレーシングサービス(千葉市若葉区川井町116-2 ☎︎043-228-4506)
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