トレール乗りが見たXL750 TRANSALP

先日、新型トランザルプの試乗会にお邪魔させていただき、ワインディング、高速道路、林道を含めたツーリングルートで試乗してきました。その短評を、新型トランザルプ発売日の今日、WEBゴー・ライドで紹介いたします。

扱いやすくて快適なオンロード性能

新型トランザルプの総合的なインプレッションは、すでにバイク誌やWEBに掲載されているので、そちらを参照していただければと……。ここでは、普段250トレールを愛車としている林道ツーリングライダーのオガPが、林道ツーリングマシンとして見た新型トランザルプについて述べていきます。

新型トランザルプはオンもオフも快適に走るミドル・アドベンチャーモデルとして、車重は210kgを下回る209kgに設定されたそうですが、「開発途中で重くなったら、その分は減らす」というルールを設け、目標を下回る208kgを実現しています。

シート高は850mmで身長172cmの私は、片足を着いてもカカトが少し浮く程度。停止状態からの車重208㎏の取りまわしは、めちゃくちゃ軽い、というわけではないですが、足着きに不安を感じないので、アドベンチャーモデルとしては良好だと思います。

 こうした取りまわしが問題になるのは、林道でのUターンになると思います。ホンダにはエンストしないDCTがあり、それがエンストからのポテ転けを防いでくれますが、極低回転からのツキのよさで予想以上にマシンが前進することがあります。そんな時、MT車なら半クラッチで車速を調整できるのですが、微妙なクラッチワークはオフロードビギナーには難しく、エンストからのポテ転けの不安が付きまといます。

それが嫌で、アドベンチャーモデルで林道に踏み入るのは躊躇しがちなのですが、新型トランザルプの新開発エンジンは極低速トルクが粘ってくれます。今回、街中からワインディング、高速道路、林道と走破しましたが、一度もエンストしませんでした。アシストスリッパークラッチ装備でクラッチレバー操作も軽く、林道のUターンでの極低回転から高速道路での高回転の巡航まで、全域で扱いやすいエンジンになっていました。

タイヤは1987年登場の初代XL600Vトランザルプがフロント21インチを採用していたこともあり、新型トランザルプもフロント21インチ、リヤはタイヤ選択肢の豊富さもあって18インチを採用しています。ただ、アドベンチャーモデルはオンロードでの旋回性のよさを狙ってフロント19インチが多く、21インチと大径の新型トランザルプは、オンロードのハンドリングが少しダルいのでは? と予想していました。

が、新型トランザルプのハンドリングは軽快で、21インチに由来するダルさは皆無でした。全域で扱いやすいエンジンと軽快なハンドリングのおかげで、オンロード性能はかなり高いです。また、「SPORT」「STANDARD」「RAIN」「GRAVEL」「USER」とライディングモードを変更することができ、それぞれに特徴があることも、状況に合わせた使いやすさになっています。それと、小ぶりですが高い防風性を発揮するシールドも高速巡航での疲労軽減に貢献しています。

自分仕様で高いオフロード性能を発揮する

軽快なハンドリングはダート路面の林道でも変わりません。個人的にはシッティング状態でもう少しフロント荷重をかけられれば、ハンドリングに粘りが出て、前輪の接地感がさらに分かりやすくなるのでは? と思いました。だったらスタンディングすればいいのでは? と思うでしょう。

ということで、スタンディングしてみると、自然とフロント荷重できるライディングポジションがバッチリと決まります。「SPORT」や「STANDARD」モードでパワーをかけつつスピードを上げていくと、前後サスも路面からの衝撃をよく吸収し、テールスライド(パワースライド)も感じながら林道を走破していけます。この時にアドベンチャーモデルとして軽量な208kgの取りまわしやすさも感じられました。

「GRAVEL」モードは「荷物満載時でもダートを安心して走るためのモード」として開発され、トラクションコントロールの介入度が高いモードになっています。アクセルをラフに操作してもテールスライドせず、路面も掘りにくくなっています。その反面アクセルを開けても加速しにくく、マシン挙動は乱れにくいのですが、勢いを利用して前進するのも難しい。つまりシッティングで足を地面に着きながらトコトコ進んでいくことになります。この時にシート高850mmの足着き性に助けられるのですが、ハンドリングがもう少し粘ればマシン挙動もさらに乱れにくくなり、より安心できるだろうと感じたのです。

という感じで、ダート路面で「SPORT」や「STANDARD」モードを使ってスタンディング走行できるライダーなら、新型トランザルプはトレールマシン感覚で林道ツーリングができるオールラウンドなミドル・アドベンチャーとして楽しめます。とはいえ、オフロードビギナーが手こずるような尖った乗り味もなく、全域で扱いやすいエンジン特性のおかげで、多くのシーンでXLシリーズらしい乗りやすさが感じられます。コストパフォーマンスもよく、250トレールからのステップアップや、リッターアドベンチャーからのダウンサイジングとしてもオススメできるアドベンチャーマシンになっています。

トランザルプの国内初登場は1994年のトランザルプ400Vでした。当時はCRM250R、KDX250SR、RMX250Sといった2スト250トレールが大人気で、トランザルプ、アルティシア、KLE400といったモデルの人気はイマイチでした。それから30年近く経ち、こうしたツアラーがアドベンチャーモデルと呼ばれるようになり、世界的に人気のカテゴリーになるとは思っていませんでした。

XL750 TRANSALPのオールマイティさに感心しつつも、オフ性能をさらに重視したCRF750Lも登場してほしいなぁ、なんて思ったのでした。

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